患者・患者ご家族からの体験談:

何がきっかけでシトリン欠損症を知ったのか、

うちの子は37週で生まれ、2280gと週数の割に少し小さな赤ちゃんでした。
しっかり哺乳量を確保できているのにもかかわらず、身長も体重も伸び悩んでいました。
少し黄疸が出ているようでしたが、経皮ビリルビンは正常値でした。
体重増加不良を医療機関に相談しても、異常なしと言われました。

生後4ヶ月半の頃、別件で総合病院の小児科を受診する機会があり、
ついでに医師に体重の件を相談しました。
母乳育児できちんと哺乳できているなら、このくらいでも心配いらないとのことでした。
ただ、前日に便の色が少し薄い気がしてそのことも相談したところ、血液検査をすることになり、
結果、直接ビリルビン、プロトロンビン、ALP、γGTなどの数値の異常が見つかり、
胆道閉鎖症が疑われそのまま入院となりました。

その後、5日間の検査入院で胆道閉鎖やアラジール症候群などが否定されたため、
退院し、お薬とMCTミルクを飲みながら、遺伝子検査の結果を待ちました。
入院から1ヶ月余りで、シトリン欠損症の確定診断がでました。

それからの生活

それまで母乳育児をしていたので、MCTミルクを哺乳瓶から飲ませるのはなかなか大変でした。
それでも、体重増加不良の原因がわかり、頑張る方向性が見えたので気持ちは楽になりました。

黄疸が消え、身長や体重も増え始め、肝臓の数値も良くなり、お薬の種類も徐々に減り、
嫌がっていたMCTミルクも離乳食の始まりと共にMCTオイルに切り替え、どんどん楽になりました。
1歳前には数値も改善し、お薬もなくなり、診察は2ヶ月おきになり、普通の暮らしになりました。

シトリン欠損症と関係あるかわかりませんが、うちの子は、生後4ヶ月で検査入院したときには
まだ頸がすわっていませんでした。
退院後、MCTミルクやお薬を飲むようになって、寝返り、首すわり、ひとりすわりができるようになり
その後の発達はあまり心配することはありませんでした。

離乳食では、食癖がでてきているように思いますが、
シトリン欠損症だと事前に分かっていたおかげで必要以上に悩まずにすみ、良かったと思います。
子どもがどんなものを食べたがる傾向にあるのか、良く観察するようにしています。

私は医学や栄養のバックグラウンドが全くありませんが、
シトリン欠損症が分かってからは、できるだけ勉強し理解したいと思っています。
子どもと一緒に、家族も健康になれたらいいなと思います。

今回財団の設立に対して期待されていることなど、

去年、Yenさんから財団を設立される話を聞き、とても心強く、
佐伯先生も研究を続けられるということで、それまで不安ばかりでしたが、
この子が大きくなる頃にはいろいろ解決しているのではないかと希望を持てる明るいニュースでした。

シトリン欠損症は情報が少なく、身近に患者さんもいない為、特に食事についてはいろいろと
悩むことも多いので、そういった情報がウェブサイトで共有できることについて、とてもありがたく、期待しています!

他の患者さんに共有されたいこと

自分がこれから欲しいと思う情報と、もう過ぎてしまいましたが当時欲しかった情報をあげてみます。

ウェブサイトにもしあったらいいな、と思う情報は…

・離乳食の情報
うちは第一子だったということもあり、離乳食をどう進めればいいのか悩みました。
他の方がどのように進めたか、何に困りどのように解決したか、良く食べたものは何か
といった経験談を事前に見られたら良かったと思います。
シトリン欠損症のお子さんを育てた方に「初めからお魚を食べていたよ」とか、
シトリン欠損症に詳しい栄養士さんに「初めは食べる練習だからおかゆじゃなくてヨーグルトでもいいよ」
と言われ、私は気が楽になりました。

・食癖のこと
今は離乳食というよりは幼児食に移行してきましたが、かなり偏った食事になってきていると感じています。
個人差があると思いますが、他の子がどのような食事をしているのかは気になります。
また、子どもが食べるものをあげているとメニューがマンネリ化してくるので、
他の子が好きな食べ物などが分かるとレパートリーが広がって嬉しいです。
また、単に好物というだけでなく、こういった理由でシトリン欠損症の子が食べるといいといった
栄養士さんによる解説があったらと思うことがあります。

・生活面での困りごとや解決策
今までのことでいうと、MCTミルクを飲まない、薬の飲ませ方といった悩みがありました。
これからのことでいうと、保育園に預けた場合困ることはないか(給食やおやつのことなど)。
集団生活が始まった時の、補食や給食のこと、学校への説明、お友達とのことなど。

・症状のこと
症状は個人差があると思いますが、いつ頃どういった症状が出た、という情報が欲しいと思うことがあります。

3ヶ月前にうちの子は体調を崩して、あまり食べられなくなりました。
その時、血糖値が30代まで下がってしまい驚きました。
シトリン欠損症と低血糖の話は聞いたことがあったのに、こういうケースで起こるという知識がなく、
すぐに気づいてあげられませんでした。

体調不良でご飯が食べられないと低血糖になることがある、という経験は共有すべきと思いました。
その他にも、他のご家族の経験された、シトリン欠損症の関わる症状とその対処法を事前に
知っておくことができたら、対応もスムーズになったり事前に防げるものもあるのではと思います.

・色んな世代の患者のコラムのようなもの
患者会で、元気に遊ぶ患児や、普通に社会生活を送っている大きくなった患児の方とお会いして
とても安心したのを覚えています。
また、るうたさんという方のブログで、子ども側の視点でシトリン欠損症について書かれている投稿を見て
とても参考になりました.(友達付き合いのことやシトリン欠損症をどう思っているかなど)
患者会では、ご両親たちのお話を聞きとても参考になりました。

いろいろな世代の患者さんやご家族の考えや生活を知ることは、診断が出たばかりで不安に思っている
ご両親たちにとってとても励みになると思います。
子ども自身も、もう少し大きくなった時、同じ体質を持っている方々がたくさんいて、普通の生活を送っているのを目の当たりにすることは、とてもプラスになると思います。

・シトリン欠損症の周知
うちの場合は偶然今の主治医に出会わなければ、シトリン欠損症に気づかなかったのではないか、
そうだとしたら、成長が遅いことや偏食にとても悩んだだろうと思います。
分かったおかげで、分からない不安に悩まされずにすみましたし、
食壁を矯正しない、ブドウ糖の輸液に気をつけるなどの対応ができて本当に幸運でした。

なので、シトリン欠損症に気づいていない人が気づけるような情報がネットにあったらいいと思います。
「体重増加不良+黄疸」や「炭水化物を嫌う偏食」といったキーワードからシトリン欠損症にヒットすることができたらいいと思います。

患者・患者ご家族からの体験談:

私が生まれて間もない頃、急に黄疸がひどくなり
東北大学病院へ緊急入院をしました。
診断の結果は「ガラクトース血症」
ミルクや母乳に含まれる乳糖という糖にある成分の一つ
ガラクトースが代謝できずにずっと体に蓄積されてしまう病気です.

それでも、病院から処方されたガラクトースが除去されている
特殊ミルク等のおかげで、異常なほど黄色かった肌が
日に日に通常の状態に戻っていき、
看護師さんからは「色白さんだったのね!」と言われた時は
とても嬉しかったと母は言っていました。

黄疸や数値が正常になりつつあり、
一度はガラクトース血症と診断されたものの、
少ない量ではあるけれどガラクトースを分解できているという見解になった時に、
病院側としては何故そうなったのか原因を調べたいので、
原因がわかるまで入院してほしいと言われたそうです。
が、父と母は猛反対をして
特殊ミルクの処方は継続しつつ
自宅療養との事で退院したそうです。
もし原因がわかるまで入院の道を選んでいたら、
13才になるまでずっと大学病院にいたのかなと
思うと、退院を希望した両親に感謝するほかありません。

そして離乳食を終えて完全に通常の食事を取り始めた頃から、
シトリン欠損症特有の偏食が少しずつ現れてきました。
ジュースは飲まずごはんや麺類を異常に嫌がる。
ごはんを出されても少しだけしか食べず、
おかずばかり食べたがる。
傍から見ればとてもワガママな子と思われていたかもしれません。
母はガラクトース血症になった事に原因があるかもしれないと
判断して、あまりごはんを食べる事を強要しませんでした。

当時の私としては、どうして私はごはんや麺類を食べると
気持ちが悪くなるんだろうと思い悩んだ事は無く、
それでもずっと体の中に泥が沈殿している感覚だったので、
自分が飲食を選べる時はごはんは拒否しておかずを重点的に食べて、
飲み物はジュース類を選ばずお茶かお水を飲んでました。
物心がつく前から炭水化物を食べると
胃の中がモヤモヤするのが私の中では「普通」でしたので、
それがおかしいとは思っていなかったのが現状でした。
もしかしたら、それが変な事だと思わないように制御して、
変な事だと自覚した所で、今の自分には何もできないと
思っていたのかもしれません。

あと常にお腹が空いている状態でもありました。

そして本当に体調が悪くなって弱気になった時には
誰かと私の体を交換してもらいたい。
その誰かに今の自分の体の状態を体験してほしい。
もしかしたら自分は今とても頑張っていて、
本当は誰とも違う感覚で生きているのかもしれない。
と、たまにほんの少し考えていました。

それでも、元来の気質的に内に籠る事は無く
友達と近所の田んぼを駆け回り、
習い事はそろばん、エレクトーン、バスケット等々
気になった事はどんどんチャレンジしてみたり
割と活発な子供時代を過ごしていました。

そして中学に入学する頃、赤ちゃんの頃お世話になった
東北大学病院から手紙が届き、
その内容が乳児期にかかったガラクトース血症の原因の一つに
シトルリン血症という現在研究中の病気があるのではないかという
仮説が立ったので実証の為に採血検査をさせてほしいとの事でした。

わけもわからず、とりあえず採血して検査してもらうと
その仮説の通り自分は「シトルリン血症成人Ⅱ型」との事。
そして今までの偏食の全てが病気に起因する事を説明して貰った時、
これからはごはん食べたら気持ちが悪くなるとちゃんと言って
拒否して良いのかとほっとしました。

その頃からだんだんと体調を崩しやすくなったのですが、
今考えると元々具合悪いのに
我慢して学校に行っていたけれど、
もう我慢しなくていいのかと
肩の力が抜けてしまった事と、
生理が始まってホルモンバランスが乱れていたかもしれない事と、
小学生の時は勉強の事なんて気にせず
眠くなったら早い時間にすぐ眠る生活でしたが、
中学生になるとテスト勉強が始まり、
夜遅くまで勉強していないといけないライフスタイルに
なってしまったという色々な環境の変化で
体調がガタガタ崩れていたのかもしれません。
あと、土日は友達と遊びたい!という気概で
全力で遊びバテるという状態も追加で(笑)

自分が病気とわかったものの、
クラスメイトには当時何も言ってませんでした。
変な子と思われるのが嫌なのではなく、
この時期に言ってもきっと理解はしてくれなさそうだし、理解できずに
逆に茶化されでもしたら困るので言わなくていいかと判断していました。
無意識の自己防衛のためか、ヘラヘラしつつも
人に対しては小さい頃からシビアに見る癖がついていたのかもしれません。
そんな人は人、自分は自分を信条に突き進んでいましたが、
大人になってから周りも変化しているので
やっとサラっと言えるようにはなりました。

シトリン欠損症と診断されてこれからを生きる子供たちの
一番の悩みどころはこの友達付き合いかなとよく思います。

なので、患者会で
「友達は、多ければいいというわけではありません。
自分の事をちゃんと考えてくれる良い友達を見つけて下さい」
と言った事もありました。

この偏食やバテやすさはきっと一生続くものになります。
そして、シトルリン血症を発症して肝移植は避けたいです。
何故発症するのか、何をすれば発症を抑えられるのか
様々な研究結果がわかるのが一体いつになるか私にはわかりません。
それでも、シトリン欠損症の子供はマススクリーニングによって
発見されて患者が増え続けています。
私が生きている間に全てがわからなくとも、
ずっとこの病気に対する研究が続いてほしい
そして知名度が少しでも上がれば
シトリン欠損症と診断された子供達が過ごしやすい環境に
なるのではないかと願ってやみません。