シトリン財団よりお知らせいたします。
この度ノーベル賞受賞者であるジョン E ウォーカー (John E. Walker)教授を特別科学委員としてシトリン財団にお迎えする事となりました。
ATPシンターゼとして知られるミトコンドリアの複雑な分子反応に関するウォーカー教授の研究は、食事から得る糖分と脂肪の酸化により放出されるエネルギーが機械的な回転装置により合成され、ヒトの生命維持に必要なATPを生成することを解明しました。この功績によりウォーカー教授は1997年にノーベル化学賞を受賞しました。F.パルミエリ(F.Palmieri)氏と共にウォーカー教授はさらに、その遺伝子変異がシトリン欠損症の原因となる、アスパラギン酸―グルタミン酸トランスポーター(シトリン)を含む、ミトコンドリア輸送体ファミリーの15体の生化学的機能の特定に成功しました。教授は長年にわたり、精力的に科学的知識を医学的利益に還元してきました。ウォーカー教授をシトリン財団にお迎えでき、私達は大変光栄に思います。
ウォーカー教授は、オックスフォード大学セントキャサリン校で学士号を取得後、1974年、ケンブリッジ大学の医学研究評議会の分子生物学研究所に属し、バクテリオファージの重複遺伝子の発見に貢献、ヒトミトコンドリアDNAにその遺伝子の存在を確立しました。ケンブリッジでは、食物からのエネルギーがミトコンドリア内へ移行し、そして生命のエネルギー通貨である分子ATP(アデノシン三リン酸)に変換する事に興味を持ちました。 1982年、ATPを輸送するタンパク質など、ヒトのミトコンドリア輸送タンパク質ファミリーの53のメンバーを定義する基本的な3重反復構造の重なりを定義しました。ウォーカー教授はケンブリッジのMRCミトコンドリア生物学ユニットの名誉ディレクター・教授、王立協会のフェロー、英国最高の科学的栄誉であるコプリーメダル2012年受賞者です。また教授は医学アカデミーの特別研究員、オックスフォード大学セントキャサリン校の名誉特別研究員も兼任されています。教授の詳細な経歴は添付をご覧ください。
ウォーカー教授の豊富な専門知識と経験は、シトリン財団の活動と深く関連し、重要なものであります。 またケンブリッジでMRC研究ユニットを初段階から立ち上げた教授の経験は、研究規模拡大に取り組む財団にとり非常に有用です。ウォーカー教授の就任がシトリン欠損症の完全なる解明や、最終的には治癒に結び付く原動力となることを願います。 財団はウォーカー教授と共にこの目標に向かって歩んでゆける事に感謝いたします。
財団の設立から3年程ですが、多くの研究者、医師、患者、友人からの御支援があったからこそ、ここまで前進する事が出来ました。これからも長い道のりですが、どうぞご支援のほどよろしくお願いいたします。また進捗を
ご報告いたします。