シトリン欠損症の臨床症状は同じような背景や年齢でも患者によって多様であることが多くありますが共通する事はタンパク質と脂肪に富み、炭水化物が少ない食事の嗜好です。患者は多くの炭水化物摂取はせず、甘みがある食べ物を嫌う傾向があります ​[Pinto et al. 2020; Okamoto et al. 2021]​

シトリン欠損症は一般的に1.乳児に発症する「シトリン欠損症による新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)」​[Ohura et al. 2007; Song et al. 2019; Saheki et al. 2020]​ 2.適応・代償期 または見かけ上健康期​[Saheki et al. 2020]​  3.シトリン欠損症で病状が最も重い「シトルリン血症II型(CTLN2)」[Saheki and Song 2017] の、3つの主な臨床表現型によって区別されます。表1に各表現型における臨床症状の詳細をまとめました。

すべての乳幼児患者がNICCDを経験するわけではありませんが、発症した場合は、適切な治療と病態管理により、一般的に1歳頃にNICCDの症状は消失します。適応・代償期の患者のほとんどは表1に示す症状を示す傾向にありますが、見かけは健康であることが多くあります。

NICCD緩和後、一部の患者は、体重増加不良、低身長、低血糖、高脂血症、および血漿シトルリンとオルニチンの適度な上昇を特徴とする新たに発案された表現型、FTTDCDを発症する事もあります[Song et al. 2011;日本先天代謝異常学会2019;Häberle and Rubio2022]。 FTTDCDの臨床的および検査的特徴は現在明確化され、適切に定義されつつあります。

CTLN2の発症は緩やかなものと突発的なものがあり、アルコール摂取、長期にわたる過剰な糖質摂取や短期間での多量の糖質摂取、禁忌薬の使用、手術、感染症などが引き金になると考えられています。適切な時期に適切な医療・治療なしでは脳浮腫を発症し、致命的な状態になることがあります。しかし、シトリン欠損症のすべての患者がCTLN2を発症するわけではありません。実際、適切な食事管理とフォローアップを行えば、ほとんどの患者がCTLN2を発症することはありません。詳しくは「疾患の発症率」をご覧ください。

シトリン欠損症患者がよく直面する症状については、こちらをクリックしてください。これらの症状がある方、またはシトリン欠損症の疑いがある方は、かかりつけの医師にご相談いただくか、当財団までご連絡ください。

年齢区分 表現型 主な症状 その他の症状
新生児 シトリン欠損症による新生児肝内胆汁うっ滞症 (NICCD)  遅延性黄疸、成長障害、肝腫大、胆汁うっ滞、びまん性脂肪肝、実質細胞浸潤
通常1歳以降に自然治癒する。
出血性疾患、ビタミンK欠乏症、低タンパク血症、ガラクトース血症
1歳以上 適応・代償期 タンパク質や脂肪豊富な食品を好み、炭水化物豊富な食品や糖質を嫌う強い嗜好 疲労感、低血糖、腹痛
シトリン欠損症による成長障害と脂質代謝異常(FTTDCD)* タンパク質や脂肪豊富な食品を好み、炭水化物豊富な食品や糖質を嫌う強い嗜好、疲労感、低血糖、胃腸障害、食欲不振、成長障害等 膵炎、高脂血症、肝細胞癌、脂肪肝
思春期 / 成人 成人発症II型シトルリン血症 (CTLN2)* タンパク質や脂肪豊富な食品を好み、炭水化物豊富な食品や糖質を嫌う強い嗜好、高アンモニア血症、シトルリン血症、急性脳症、意識障害飲酒、過剰な炭水化物摂取、手術、感染症が誘因となる可能性がある。  膵炎、高脂血症、肝細胞癌、脂肪肝、低BMI

シトリン欠損症による新生児肝内胆汁うっ滞症 (NICCD) 

年齢区分 表現型 主な症状 その他の症状
新生児 シトリン欠損症による新生児肝内胆汁うっ滞症 (NICCD) 遅延性黄疸、成長障害、肝腫大、胆汁うっ滞、びまん性脂肪肝、実質細胞浸潤
通常1歳以降に自然治癒する。
出血性疾患、ビタミンK欠乏症、低タンパク血症、ガラクトース血症

シトリン欠損症による成長障害と脂質代謝異常(FTTDCD)*

年齢区分 表現型 主な症状 その他の症状
1歳以上 適応・代償期 タンパク質や脂肪豊富な食品を好み、炭水化物豊富な食品や糖質を嫌う強い嗜好 疲労感、低血糖、腹痛
1歳以上 シトリン欠損症による成長障害と脂質代謝異常(FTTDCD)* タンパク質や脂肪豊富な食品を好み、炭水化物豊富な食品や糖質を嫌う強い嗜好、疲労感、低血糖、胃腸障害、食欲不振、成長障害等 膵炎、高脂血症、肝細胞癌、脂肪肝

成人発症II型シトルリン血症 (CTLN2)* 

年齢区分 表現型 主な症状 その他の症状
思春期 / 成人 成人発症II型シトルリン血症 (CTLN2)* タンパク質や脂肪豊富な食品を好み、炭水化物豊富な食品や糖質を嫌う強い嗜好、高アンモニア血症、シトルリン血症、急性脳症、意識障害
飲酒、過剰な炭水化物摂取、手術、感染症が誘因となる可能性がある。
膵炎、高脂血症、肝細胞癌、脂肪肝、低BMI

*CTLN2を発症するのはごく一部の患者です。  

引用文献はこちらよりご覧ください。