シトリン欠損症の医学的な治療指針が岡野善行先生により報告されました。(本文英語)
題名は「Current treatment for citrin deficiency during NICCD and adaptation/compensation stages: Strategy to prevent CTLN2」(和訳:「シトリン欠損症における新生児胆汁うっ滞(NICCD)期と 適応・代償期の近年の治療法:CTLN2の発症を予防するためには」)で、Molecular Genetics and Metabolism(https://doi.org/10.1016/j.ymgme.2019.06.004)に掲載されています。
この指針の報告はシトリン財団の助成によりなされました。
この論文によると成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)の本邦における発現頻度は10万人に一人ですが、シトリン欠損の遺伝子解析では遺伝子保有者(ヘテロ接合体の方)は65人または42人に一人とされています。しかしCTLN2の予測頻度(1.7万人に一人、または7.1千人に一人)は発症したCTLN2患者の実際の数とは大きく違い、シトリン欠損症の患者のほとんどがCTLN2を発症しないということがうかがえます。CTLN2発症には酒類や過多な炭水化物の摂取、疲労など様々な要因が考えられます。これはつまりシトリン欠損の遺伝子と共に食事など環境由来の要因がCTLN2発症へ関連していくとも言えます。肝移植は最適なCTLN2治療とされていましたが、近年では食事療法に加えアルギニン、ピルビン酸、中鎖脂肪酸(MCT)オイルの効果も論証され、CTLN2発症を防ぐには包括的な治療が重要である事が見えてきました。また最近ではシトリン欠損モデルマウスでオルニチンとアスパラギン酸の組み合わせによる血中アンモニア値の低下作用がみられ、シトリン欠損症の患者への効果も期待されます。
CTLN2を起こす原因遺伝子の特定から20年以上が経ち、数多くの臨床研究報告が発表されました。この論文では岡野善行先生がNICCD期と見かけ上健康期の現在の治療法やCLTN2発症を防ぐ方法について解説なさっています。
シトリン財団はこの治療指針の研究の準備過程を助成いたしました。私たちはこの指針が国内外の医療現場で行われるシトリン欠損症の治療の助けになることを願います。
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(2019年8月更新)