乾 あやの 先生
済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科 部長

自然歴に関する研究の開始について

「シトリン欠損症患者の自然歴に関する研究」が済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科 乾あやの先生により開始されました。この研究の目的はシトリン欠損症の症状・徴候に関連する因子の検討を行い、シトリン欠損症に関する適切な治療方法やCTLN2への進展予防方法を考察する事です。シトリン財団はこの研究を助成しています。

この研究は以下の3つのサブ研究に分かれます。

サブ研究1:症状・徴候等に関する後方視的検証

目的: シトリン欠損症の症状・徴候と化学検査データや血中アミノ酸プロファイルとの関連性やエネルギーやタンパク質、糖質、脂質といった栄養素以外の栄養素や食品との関連については報告がありません。この研究では症状・徴候に関連する因子の探索と栄養学的特徴や成長発達の状況について検証します。

研究対象者: 研究参加の承諾をした済生会横浜東部病院で通院歴のあるシトリン欠損症患者約30名。

研究の方法: 初診から2021年3月までの診療録、栄養指導録から症状・徴候並びに検査結果、食事、栄養摂取状況、身長・体重等の成長発達等に関する情報を収集し、統計解析を行います。

サブ研究2:持続血糖測定による血糖推移に対する関連因子の検討

目的: シトリン欠損症患者は低炭水化物食を好みますが、低血糖のリスクもあり、また小児期の低血糖は症状として判断しにくい状況にあります。この研究では潜在的な低血糖の有無を把握するとともに、食事・栄養摂取量と血糖推移の関連性について検討します。

研究対象者: 研究参加の承諾をした4歳以上のシトリン欠損症患者で上記サブ研究1の対象者約10名。

研究の方法: グルコース計測モニター機であるセンサーを上腕に最大14日間装着し、その間連続7日間の食事を記録してもらいます。写真などで対応も可能です。センサーと記録用紙は研究事務局に送付してもらい、そこから取り出されたデータを集積し、分析します。データは診療録にも記載されます。

サブ研究3: PSTI(膵分泌性トリプシンインヒビター)の基準値に対する検討

目的: CTLN2ではPSTIが高値であることが報告されていて、シトリン欠損症の診断評価マーカーになりうると考えられていますが、小児の基準値は設定されていません。この研究では小児の基準値の検討をするとともに、PSTIが小児期のシトリン欠損症においても診断マーカーとして有用であるかの検証をします。

研究対象者: シトリン欠損症患者グループは上記サブ研究1と同じ。対照者グループは済生会横浜東部病院に通院歴があり、急性膵炎、悪性腫瘍や他PSTI数値に影響が出る病気をしていない、研究参加の承諾をした患者。

研究の方法: 同意を得られた研究対象者の保存血清や受診時に行う採血からの残血清からPSTIの測定・分析します。データは診療録にも記載されます。

(2020年2月 更新)