エドモンド・クニ教授 ソティリア(ローラ)・タボウラリ 先生
イギリス ケンブリッジ大学MRC ミトコンドリア生物学室

「シトリンの変異とミトコンドリアの機能への影響」

シトリン欠損症はシトリンというタンパク質輸送体が正常に働かない為に起こる疾患です。シトリンはミトコンドリアという細胞内に存在します。通常シトリンはアミノ酸の一種であるグルタミン酸をミトコンドリア内に、また別のアミノ酸の一種であるアスパラギン酸をミトコンドリア外に輸送し、その機能は細胞質の機能や人体の機能において重要な役割を果たします。しかし特殊な変異がシトリンの機能を欠損させ、それがこの疾患へつながります。我々はこの変異がどのようにシトリンの機能に影響し、そしてどのようにミトコンドリアやヒトの細胞質の機能に変化をもたらすのかを研究し、治療に役立てたいと思っています。


シトリンにおける科学的な説明

シトリンは、3つのドメインで構成され、輸送体タンパクとして最も複雑な構造をとります。一つ目のドメインは調節 (regulatory) ドメインと呼ばれ、カルシウムの結合・放出時に構造を変化させます。 二つ目のドメインは輸送(transporter)ドメインと呼ばれ、アミノ酸のグルタミン酸をミトコンドリアへ、ミトコンドリアからアスパラギン酸を輸送します。3つ目のドメインは調節過程でカルシウム結合時に調節ドメインに結合し、カルシウム分離時では調節ドメインから分離されます。

また、シトリンは調節ドメインを介して二量体を形成するため、合計6つの動的ドメインで構成されます。

私達ケンブリッジ大学MRCミトコンドリアユニットはシトリンたんぱくの病原性変異の分子特性を評価し、この変異が細胞およびミトコンドリアの機能に及ぼす影響について研究します。また、シトリン欠損症における代謝機能と代謝を改善する要因を分析し、治療の発見に貢献したいと考えます。

(2018年8月 更新)