岡野 善行 先生
おかのこどもクリニック院長

2021年10月26日におかのこどもクリニック院長であり、多くのシトリン欠損症研究に携わってこられた岡野善行先生が他界されました。

岡野先生は医師として無私の心で全力を注ぎ、尊敬すべき大切な方でした。

心よりお悔やみ申し上げます。

こちらからシトリン財団が故 岡野善行先生へ贈る弔辞をお読みください。

「シトリン欠損症における食事療法のガイドラインの作成と成人発症2型シトルリン血症の発症因子と予測因子の解明」

Kobayashi & Saheki らによる成人発症II型シトルリン血症の責任遺伝子SLC25A13の発見とCitrin蛋白の同定とその役割が明らかにされて以来、シトリン欠損症について飛躍的に多くの知見が得られてきている。シトリン欠損症が成人期のみに発症する疾患ではなく、新生時期には胆汁うっ滞症(NICCD)を、その後、適応期/代償期を経て、一部の患者が成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)を発症するとされている。CTLN2の発症には食生活と糖質の過剰摂取などが大きく関与するとされている。現在のところ、食事療法は最も重要な治療法の一つである。シトリン欠損症患者が高蛋白・高脂質の食品を好み、穀物や糖質を避けることに注目し、2008年Sahekiらが患者の栄養調査を報告している。積極的な食事制限の無い下で18例の患者(1才から33才)の食事評価では、摂取エネルギーは推奨値の87%へ低下し、PFC ratioが19±2、44±5,37±7と高蛋白高脂肪食となっていた。そして、この食事内容を少なくとも維持されるべきであると論じている。

 シトリン欠損症の治療の中心となっている食事療法について、それ以降くわしい調査はなされていない。今回、1)摂取エネルギー、PFC ratioを中心とした栄養評価、2)約450種類の食品による食癖嗜好の調査、3)日常の生活で困難を感じていること、病的状態の時に注意していることなどのアンケート、4)日常生活のQOL評価と疲労度評価、5)体格 について、患者および患者家族を対象としたアンケート調査を行っている。これらのアンケート調査から、1)シトリン欠損症患者に適切な栄養摂取量を検討する。2)摂取エネルギーとPFC ratioに対する体格やQOLの関係を明らかにする。3)生活習慣での注意点や病気の時の注意点を明らかにする。4)食癖嗜好のアンケートから好まれる食材を選択する。最終的には食事療法のガイドブックを作成する。

アンケートはシトルリン血症患者会、シトリン財団、東北大学(坂本 Dr.)、仙台市立病院(大浦 Dr.)、千葉県立子ども病院(村山 Dr.)、済生会横浜東部病院(乾 Dr.)、信州大学(矢崎 Dr.)久留米大学(渡邊 Dr.)から配布されている。これまで35家系を超える回答を得ている。現在もアンケートの回収中であるが、食事評価の印象では、1)小児では摂取エネルギーが推奨値より多い傾向にあり、肥満度は適正範囲内にある。成人では摂取エネルギーが推奨値より低い傾向にあり、軽度の痩せを示す。2)以前の調査結果と比較して、より高蛋白、より高脂質、より低炭水化物の食事をとっている患者がよく見られる。3)同一家族内でシトリン欠損症患者の食事の影響を受け、高蛋白高脂質なっている正常対照者が時に認められる。これから、より多くの情報が解析される予定です。

(2018年8月 更新)

シトリン欠損症の医学的な治療指針が岡野善行先生により報告されました(本文英語)

題名は「Current treatment for citrin deficiency during NICCD and adaptation/compensation stages: Strategy to prevent CTLN2」(和訳:「シトリン欠損症における新生児胆汁うっ滞(NICCD)期と見かけ上健康な適応代償期の最近の治療法:CTLN2の発症を予防するためには」)で、Molecular Genetics and Metabolism(https://doi.org/10.1016/j.ymgme.2019.06.004)に掲載されています。

このガイドラインは英文ですが、全文はここをクリックしてご覧ください。