20211026日におかのこどもクリニック院長であり、多くのシトリン欠損症研究に携わってこられた岡野善行先生が他界されました。 

岡野先生は医師として無私の心で全力を注ぎ尊敬すべき大切な方でした。 

心よりお悔やみ申し上げます。 

岡野先生は献身的な医師でした。先生の言葉からもれる一言一言から医師としての情熱や患者への想いを感じることができました。先生の想いはクリニック内にとどまらず、世界中のシトリン欠損症患者へも向けられました。また先生は体のケアのみならず患者の生活の質や精神面の健康にも気遣われ初めてシトリン欠損症患者のQOLに焦点を当てた論文である、Fatigue and quality of life in citrin deficiency during adaptation and compensation stage(和訳:適応・代償期におけるシトリン欠損症の疲労感と生活の質2013年にMolecular Genetics and Metabolism誌にて発表されました。先生は大阪市立大学で講師と小児臨床医としてご活躍されていた頃、また2011年にクリニックを開設された後もシトリン欠損症に関する多くの論文や研究に携わってこられました。毎年開催されるシトリン欠損症患者会であるシトルリン血症の会にも欠かさずご参加され最新の研究について発表を重ね、患者交流会ではたくさんのご意見をいただきました。常に真摯に、そして優しく患者に寄り添う先生でした。ポジティブで共感的で心強いアドバイスをいつも私たちに与えてくださり、先生の存在は平穏と知識の源でした。 

岡野先生はご家族をとても大切にしていらっしゃいました私たちは奥様やお嬢様に何度もお会いする機会に恵まれました。お嬢様の舞先生は小児科医になられています。先生のご家族に心よりお悔やみ申し上げます。  

岡野先生数十年もの間シトリン欠損症研究と治療に携わっておられ、この分野で数少ない小児科の研究者/臨床医のおひとりです。専門知識は幅広く、特にピルビン酸ナトリウムや食事療法の治療法に焦点を当てていらっしゃいました。先生は世界においてシトリン欠損症の治療ガイドラインが設定されていない事を懸念され、2017年シトリン財団からの助成のもと、ガイドラインの設立に取り組まれることとなりました。そして2019年Molecular Genetics and Metabolism誌にてCurrent treatment for citrin deficiency during NICCD and adaptation/compensation stages: Strategy to prevent CTLN2」(和訳:「シトリン欠損症における新生児胆汁うっ滞(NICCD)期と 適応・代償期の近年の治療法:CTLN2の発症を予防するためには」)の論文を発表なさいました。 

岡野先生はシトリン欠損症患者の食事と生活の質に関する新たな調査研究を実施し、現状把握をすることによりより一層患者に寄り添えるよう、力を尽くされました。シトリン財団からの助成を受け多くの医師、施設、患者会、そして患者さん自身の協力のもと、患者の食物嗜好と生活の質に関する詳細な調査結果をまとめあげ20213月にAnalysis of daily energy, protein, fat, and carbohydrate intake in citrin-deficient patients: Towards prevention of adult-onset type II citrullinemia」(和訳 シトリン欠損症患者のエネルギー、タンパク質、脂肪、炭水化物摂取の考察:成人発症II型シトルリン血症発症予防に向けて) Genetics and Metabolism誌にて発表なさいました。 

上記調査研究中に得た患者からの多くのコメントから岡野先生は食事の好みに関する更なる調査研究の必要性を感じられ、 

おかのこどもクリニックにて勤務していた岡本美紀管理栄養士と共に食事に関するたな論文に着手されました。この頃は病とのたたかいで治療を受けながらの作業でした。それでも論文を書き上げ、この論文Food Preferences of Patients with Citrin Deficiency」 (シトリン欠損症患者の食事嗜好)20219にNutrients誌にて発表されました。 

私たちが最後に岡野先生のお姿を拝見したのはシトリン財団が助成する研究の研究責任者と研究チームメンバーが参加するグローバルZoom会議でした。先生は治療を続けておられお体が万全の状態ではないこの時期にでも私たちの会議にご参加されました。私たちは岡野先生のたゆまぬ精神力想いに深く感動させられ先生との思い出は私たちの記憶に永遠に刻まれます。先生への感謝は絶えることがありません。ご冥福をお祈り申し上げます。