長崎幸夫教授
筑波大学 数理物質系 物質工学域

シトリン欠損症のための NanoAA の開発

アミノ酸は、筋肉や酵素などの生物の構成要素に関与するタンパク質であるだけでなく、生物のさまざまな生理学的反応に関与する重要な生体分子でもあります。たとえば、アルギニンは一酸化窒素シンターゼ(NOS)の基質としてNOを生成することにより血管新生やアポトーシスの誘導などに関与し、オルニチンは肝臓の尿素サイクルによるアンモニア代謝に関与します。これらの様々な生理的効果にもかかわらず、アミノ酸は水溶性が高く、分子量が小さいため、経口投与しても血中に吸収されにくく、非常に早く排泄され、有効利用が困難です。

これらの問題を解決するために、ポリ(アミノ酸)を一成分とし、水中で会合させることでナノ粒子(NanoAA)を設計し、新しいアミノ酸デリバリーシステムを行ってきました。 NanoAAは投与後、ゆっくりと代謝されて対応するアミノ酸が生成され、体中に持続的に供給されるため、アミノ酸による治療法を大幅に改善しました。これまでに、癌、急性肝不全、パーキンソン病の治療法についてのナノアミノ酸を作製し、効果を報告してきました。本研究では、新しいNanoAAをデザインし、これによるシトリン欠損療法を提案したいと思います。

(2022 年 6 月 更新)