エドモンド・ク二 教授 ソティリア(ローラ)・タボウラリ 先生 
イギリス ケンブリッジ大学MRC ミトコンドリア生物学室

肝細胞および組織に対するシトリン遺伝子のパソジェニック変異生体エネルギー、代謝形態に関する影響 

シトリン欠損症はシトリンというタンパク質が正常に働かない為に起こる疾患です。シトリンは細胞の中にあるミトコンドリアの膜で活動し、アミノ酸の一種であるグルタミン酸をミトコンドリア内に、また別のアミノ酸の一種であるアスパラギン酸をミトコンドリア外に輸送する大切な機能を担っています。このシトリンタンパク質が遺伝子の変異により失われたり少なくなったりしてしまった場合、本来シトリンが果たす機能に何らかの影響を及ぼし、シトリン欠損症となります。我々は遺伝子の変異がどのようにシトリンの機能に影響し、どのようにミトコンドリアやヒトの細胞質に変化をもたらすのかを研究し、治療に役立てたいと思っています。 


研究概要 

シトリン欠損症は、ミトコンドリアのアスパラギン酸・グルタミン酸の交換反応を触媒する輸送体(AGC2)をコードするSLC25A13遺伝子の変異により起こる常染色体劣性の疾患です。シトリン欠損症を起こすパソジェニック変異はミスセンス、ノンセンス、欠如、挿入等多岐にわたり、私たちはこれらの変異が起こす分子レベルや細胞レベルの機序への影響について研究をし、患者の症状や発病の違いへの関連を明らかにし、治療へつなげていきたいと考えます。私たちは、遺伝子編集、高度顕微鏡、メタボロミクスおよび生体エネルギー測定を含む、さまざまな生化学的、生物物理学的、および細胞生物学の技術を駆使し学際的なアプローチを取りますまたシトリン欠損症細胞モデルを新たに開発し、パソジェニックの変異が及ぼす影響を研究します。特にそれらの変異が及ぼすミトコンドリアと細胞全体恒常性への機能、生体エネルギー、代謝、形態学的な影響を評価し、また栄養補助食品や新規治療戦略がシトリン欠損症をどのように改善できるかについても調査しす。 

ミトコンドリア内膜でアスパラギン酸とグルタミン酸を輸送するシトリン 

シトリンのN末端カルシウム調節ドメインには8つのEFハンドがあり、カルシウム応答ドメインは明るい青で、二量体化に関与する静止ドメインは緑で表記しています。キャリアドメインは、赤、青、黄で表記される3つのコア要素と灰色で示されている3つのゲート要素で構成されています。 両親媒性ヘリックスを持つC末端ドメインはオレンジで表記されています。

(2022 年 4 月 更新)