2025年9月、世界各国から2,800名以上の参加者が京都に集い、国際先天代謝異常学会(International Congress of Inborn Errors of Metabolism:ICIEM)2025において、先天代謝異常症分野の知識交換とさらなる発展に向けた議論が行われました。私たちは、この国際的な学会に参加させていただく機会を頂戴し、当財団の継続的な取り組みを共有し、希少疾患分野の進歩に貢献する機会を賜りましたことを、ICIEM 2025会長の中村公俊教授ならびに運営委員会の皆さまに深く感謝申し上げます。以下では、こうした共同の努力がどのように形となって表れたのか、そのハイライトをご紹介いたします。
ジョン・ウォーカー教授による開会基調講演
当財団の科学監督委員会会長であり、1997年にノーベル化学賞を受賞したジョン・ウォーカー教授(ケンブリッジ大学・英国)が、開会基調講演として大変刺激的なお話をしてくださいました。講演「My Life in the Mitochondria(私のミトコンドリア研究人生)」では、生涯にわたる科学探究への情熱を振り返るとともに、細胞のエネルギー源であるATPを生み出す酵素「ATP合成酵素」に関する先駆的研究について紹介されました。この画期的な研究はノーベル賞受賞につながり、現在も代謝や代謝異常症に対する理解を大きく前進させ続けています。
特に、ウォーカー教授が講演の中で、シトリン蛋白質を特定した自身の発見に触れてくださったことに深く感謝いたします。この発見が、日本におけるシトリン欠損症の解明へとつながる重要な契機となりました。ウォーカー教授のご講演は、医学の進歩における基礎研究の重要性を改めて強調するとともに、教授の科学的貢献がシトリン財団の使命と深く共鳴していることを明確に示すものとなりました。

シトリン欠損症スペシャルシンポジウム
登壇者からは、以下のような多岐にわたるテーマについて講演が行われました:
- 肝臓の代謝性疾患および尿素サイクル異常症のスペクトラムにおけるシトリン欠損症の理解
ヨハネス・ヘーバレ(チューリッヒ大学小児病院/チューリッヒ大学〈スイス〉) - 代謝フラックス解析とシトリン欠損症における新たな生化学的知見
マーク・ヘラースタイン(カリフォルニア大学バークレー校〈米国〉) - プライム編集による遺伝性肝疾患の修復
ゲラルド・シュワンク(チューリッヒ大学〈スイス〉) - 日本における成人シトリン欠損症患者の現状
城戸 淳(熊本大学〈日本〉) - プロテオミクスを活用したシトリン欠損症の新生児スクリーニングへのアプローチ
和田 陽一 (東北大学〈日本〉) - 希少疾患領域における新規治療の財政的課題と今後の展望
バーバラ・ユー(シトリン財団〈シンガポール/英国〉)
この学際的なセッションは、基礎科学、新たな治療法、そして実臨床をつなぎ合わせる私たちの共同の可能性を力強く示すものとなりました。


人工知能(AI)全体講演およびラウンドテーブルディスカッション
学会の全体セッションでは、バーバラ・ユーがマーシャル・サマー(Uncommon Cures、米国)とともに座長を務め、バイオメディカルサイエンスへのAI応用を牽引する世界的リーダーであるマリンカ・ジトニク(ハーバード大学、米国)を迎えました。ジトニク先生は「Empowering Biomedical Research with AI Scientists(AIサイエンティストによるバイオメディカル研究の強化)」と題した講演を行いました。
この講演では、AIが科学研究、創薬、そして臨床応用をどのように加速し、最終的には先天代謝異常症(IEM)に影響を受ける方々の医療成果向上につながるかが強調されました。また、シトリン財団はジトニク先生に加え、世界各国のトップレベルの臨床医・研究者を招き、非公開のラウンドテーブルディスカッションを開催しました。議論では、AIがシトリン欠損症研究をどのように革新的に前進させ得るか、その可能性と、最先端技術を効果的に活用するための将来的な協働の道筋について探求しました。この先進的な意見交換にご参加いただいたマリンカ・ジトニク氏ならびに全ての参加者に心より感謝申し上げます。






第6回 国際尿素サイクル異常症シンポジウム
ICIEMのサテライトミーティングの一環として開催された第6回国際尿素サイクル異常症(UCD)シンポジウムでは、世界中のUCD研究者が一堂に会し、新たな発見を共有し、協力関係をさらに強化し、次世代の研究者を育む場となりました。
本会は、National Urea Cycle Disorders Foundation(NUCDF)とUrea Cycle Disorders Consortium(UCDC)が共同主催し、シトリン財団も運営委員会および科学プログラム委員会の一員として参加できたことを誇りに思います。
合同セッションでは、バーバラ・ユーと トレサ・ワーナー(NUCDF、米国) が「Innovative Therapies: Patients’ Expectations(革新的治療:患者の期待)」をテーマに発表しました。本セッションでは、科学的進歩を患者の実際の生活経験と統合する重要性、そして革新的治療を前進させる上で患者団体が果たし得る役割が強調されました。


