このたび、Molecular Genetics and Metabolism誌にて、新しい論文「希少疾患の研究と評価に患者さんの経験を活かす:シトリン欠損症を例に」が掲載されましたので、ご案内申し上げます。本論文は、シトリン欠損症(CD)のある成人の実体験に焦点を当てた初めての研究です。本研究は、シトリン財団が企画・実施しました。こちらのリンクより、論文全文をご覧いただけます: https://doi.org/10.1016/j.ymgme.2026.110141

文献では、シトリン欠損症(CD)は年齢によって多様な表現型を示す疾患として記載されており、「無症状期」または「適応期」と呼ばれる期間は、主に無症状で、各表現型に共通する明確な主要症状はないとされています。本研究では、こうした文献上の記載が患者さんの実体験と一致しているか、特に、無症状期/適応期が本当に無症状なのか、また患者さんが一貫して共通する症状を報告しているのかを検討しました。
シトリン欠損症成人患者経験調査は、当財団の患者ネットワークに登録している成人のシトリン欠損症(CD)患者7名を対象に実施されました。調査項目は、文献レビューに加え、これまでの患者さん、ご家族・介護者、医療従事者との対話を踏まえて、演繹的に作成しました。本調査では、症状、治療、食事、研究参加、日常生活機能、精神的健康など、複数の領域にわたってCDの疾患経験を評価しました。
本調査は、少人数の参加者から豊かな質的データを反復的に得ることを目的として、面接者が実施する自由回答形式の調査として設計されました。この過程を経て、最終的に64項目からなる質問票が作成され、最後の参加者には自己記入式で回答していただきました。結果は質的記述的アプローチにより検討し、帰納的内容分析を用いて、疾患負担に共通する領域を特定しました。その後、得られた知見を、他のCDコホート研究で公表されている結果および方法と比較しました。
疲労感と、個々の耐性を超えた過剰な炭水化物摂取によって誘発される症状は、すべての参加者から一貫して報告されており、普遍的な症状である可能性があります。参加者は、既存の文献で述べられている炭水化物への嫌悪だけでなく、過剰な炭水化物摂取に対する生理的反応も報告しており、悪心、嘔吐、腹痛、疲労感などの症状がみられました。これらの症状は、これまで体系的には検討されていませんでした。その他にも、十分に認識されてこなかった疾患領域として、消化器症状、食欲不振、心理的影響などが挙げられました。
総合すると、本研究の結果は、患者さんの実体験がこれまでの文献記載と必ずしも一致していないことを示しており、CDにおける「無症状期」という考え方に疑問を投げかけるとともに、さらなる研究が必要な普遍的症状の存在を示唆しています。
本研究は少人数のコホート(n=7)であるため、確定的な結論を導くには限界があり、より大規模な研究によるさらなる検証が必要です。現在、その計画も進められています。一方で、本研究の結果は、これまで十分に認識されてこなかった疾患領域を明らかにし、患者報告アウトカム尺度(PROMs)、臨床試験の評価項目、研究上の優先課題、そして今後の診断・管理方法の検討に役立つ可能性があります。
さらに広い観点から、本研究は、患者団体が主導する調査が、希少疾患の患者さんの実体験を捉え、従来の臨床評価では見落とされがちな疾患負担を明らかにし得ることも示しています。
本研究にご協力くださったすべての患者さん、ご家族、ならびに本論文で謝辞に記載した専門家の皆さまに、心より感謝申し上げます。特に、本研究を可能にしてくださった参加者の皆さまに、深く御礼申し上げます。
本論文は、第6回国際尿素サイクル異常症シンポジウムの特集号に掲載されたものです。本研究の発表機会をお与えくださった第6回UCDサテライトシンポジウムの委員会の皆さまに、心より感謝申し上げます。
当財団は、シトリン欠損症の理解をさらに深め、最終的には治療法を見つけることを目的として、引き続き研究プロジェクトへの支援を行っております。これまでに、シトリン欠損症の研究に対し3,000万米ドルを拠出しており、現在もこの疾患の研究を対象とした充実した研究助成を提供しています。
助成金の詳細については、こちらをご覧ください:https://citrinfoundation.org/ja/research/funding-opportunities/
皆さまからのご意見やご提案を大切にしております。どうぞお気軽に、こちらの連絡先までご連絡ください: info@citrinfoundation.org

